酒やめて、１３３０日。
もはやロマンスカー飲みでさえ「アルカス」の範疇？
一昨日、元ＴＯＫＩＯの山口達也容疑者の一件に向けられる世間の目について書かせていただきましたが、飲酒行為と社会の関係の変化ということが、いまひとつ書ききれていなかったと感じていますので、もうちょっとこの問題（？）を深掘りさせていただきます。
論を進める大前提として、酒飲みには「アルカス」と「飲酒者」がいるということを確認しておきたいと思います（て、大上段に構えることでもないのですが）。
では、アル中やアルコール依存症はどちらに分類されるのかといえば、これはどちらにもまたがっています。水平分類と垂直分類の違いですね（これまた真剣に定義づけをすることでもないのですが）。
ですからとりあえず「アルカス」と「飲酒者」ということで論を進めていきたいと思います。
まず「アルカス」ですが、要はアルコールを飲んで人に迷惑をかける人です。昨日も書きましたが、飲酒運転→事故はアルカスの究極といえます（参考「山口達也容疑者の一件に見る、「飲酒運転」ではなく「酒飲み」に対する世間の目の厳しさ」）。
あるいは迷惑をかけなくても、その姿がみっともないという人たちですね。たとえば電車の中で昼から酒を飲んでいるような人です。もちろん臭いという迷惑をまき散らしているのですが、それ以上に、なんだかその姿が「カス」です。なんてまったく人のことは言えません。私も飲酒時代は電車飲みが大好きな「鉄アルカス」（字面だけだとかっこいい）でした。このような電車内飲酒の状況は、Twitterの#常磐線日記に詳しいです（参考「ツイッターの#常磐線日記がめちゃ笑えて、しかも断酒モチベーションも高めてくれる件」）。
ただしですねー、実はそれだって以前はアルカス的行為ではなかったのですよ。日本には電車に乗ったら、それが新幹線やロマンスカーでなくても、ボックスシートの車両であれば、朝からでも昼からでも飲んでもいいという社会的通念があったのです。しかしこれは急速に消失しつつあるようですね。以前も書きましたが、酒を飲むために存在しているような帰宅時のロマンスカーでも飲む人は減っています（参考「電車と酒は手に手をとって走ってる……はずだったけど、最近様相が変わってきた？」）。隣で飲まれたら嫌、という人が増えていることの裏返しでしょう。かつて『金曜日の妻たちへ』というトレンディドラマ（死語）の中で描かれていた、つまり「トレンディな行為（？）」と認識されていたロマンスカー飲みでさえ、今や「アルカス」分類されかかっているってこってす。おそろしいです。
それはともかく、世間の目が厳しかったのは、以前はアルカスに対して（だけ）だったわけですよ。ところが今や通常の酒飲みに対しても厳しくなっているということが言えると思います。まさに酒と社会というものの関係が変容しつつあるわけです。なおかつ、ロマンスカーの例に代表されるように「アルカス」の適用範囲も拡大しているというダブルパンチです。
日本の飲酒ハードルの低さはどうなのよ？
以前であれば、いわゆる「いける口」と分かった時点で、じゃあ飲もう話のわかるヤツだとなり、今でいうところの「陽キャ」認定もされたりしました。が、今は違ってきています。
さらには山口事件を受けてネットでも指摘されたように、「飲酒習慣が脳を萎縮させる」という医学知識（？）もすでに常識化し、「いける口」は逆に仕事のパフォーマンスが落ちるんじゃないかという疑惑を持たれるようになっています。要は酒飲みということだけで、色眼鏡で見られる傾向さえあるのです。
そして、このような有名人が酒で問題を起こすたびに、その風潮が加速していくわけですよね。
もちろんテレビなどは「飲酒運転悪い」「山口いかん」で「酒自体は悪くない」ですけど、それは大スポンサーに対して忖度しているからで、世間一般とはその考え方や主張が乖離していることはみんなが感じているところでしょう。
で、世界にはイスラム圏のように飲酒がタブーという国・地域もありますが、インドのように酒は絶対禁忌ではないけれども酒を飲む人はなんとなく軽蔑される国もあります。そこのところに、もしかしたら日本もだんだんと近づいているのかなという思いがします。そのエビデンスとして、今回の山口事件に対するネットの反応が挙げられるのではないと思ってしまいます。すこしづつですが「酒」を見る目が変化しているのですね。
その一方で、今の日本は何しろ酒が安く手軽に買えて、しかも世の中全体が貧困化し酒しか楽しみがないような状況になっていますので、アルカス予備軍も増えています。
今後日本人は、酒（だけ）が楽しみの人と、酒飲まずに何事かを成す人に分化していくのでしょうか。
