現状維持バイアスは抜け出せて初めて気づくものだと、酒やめて初めて気づいた次第でございます。

酒やめて、1930日。

「借金沼が心地いい」は典型的な現状維持バイアスですよ

現状維持バイアスの怖さ、弊害といったことは、いろんな人がいろんなところで言っていて、今さら私のような者が書くのもナンなのですが、そういう事例(?)が身近にあるので、あるいは参考になるかもしれないかと。

このブログにも時々登場しますが、私の先輩に多重サイマーがいます。で、その先輩のことをよく知っている友人に親切な人間がおりまして、先輩に対して債務から抜け出す方法をいろいろアドバイス……というかご進言申し上げているわけです。今だったらコロナの補助金のもらい方だとか、後は自己破産のやり方だとかそういうことです。あるいは節税の方法なども教えているようなのですが、頑なに耳を傾けないといいます。

最近、その友人がさじを投げたように、まあ借金沼が心地いいんだろうねーと嘆いておりました。借金沼――これなんかはまさに現状維持バイアスの最たるものでしょう。

多重債務といっても生活は回っていて、「返済できた」が屈折した成功体験になり沼から抜け出せなくなってるという一面もあると思われます。

こういう現状維持バイアスの弊害は、たとえば高齢者がキャリア携帯が高くても抜け出せない、割高な保険から抜け出せないとか、あるいはもっと切実なことではブラック勤務から抜け出せないといったことまでおよび、ある意味、社会問題になっています。

しなくてもいい苦労を克服するから怖いのです

と、他人事のように記してきましたけれども、私もまったくもってそうでした。私の場合はアル中という「沼」です。

いつも書いていて恐縮ですが、酒飲んでいるとまともに頭が働く時間が非常に短くなるのです。その短い時間で何とかやろうとするのでいろいろ齟齬をきたしてしまう。

でも、これは断酒大先輩の小田嶋隆先生も著作の中も書いていましたが、それでもやれちゃう時があるんですね。いや、コラムの名手(「あの人、マジ文章上手いよなあ」と、高校の同級生であるところの雑誌編集長が言っておった)の小田嶋さんと私なんかの仕事を一緒にしちゃいかんですが、徹夜などしてまあとにかく奇跡のように仕事が時間内に大量にできちゃうときがある。それが多重債務者の返済と同じく屈折した成功体験になる。そうすると、奇跡だったのにも関わらず、自分の中では当たり前だと認識し、俺はできる飲んでいてもできるんやああああ!となり、もうそこから抜け出せなくなるんですよ。いやいやいや、ほんとに怖いことです。

現状維持バイアスというものは、本来しなくてもいい苦労を克服した、屈折した成功体験があるゆえに、現状から抜け出せなくなるという構造を有している。自分の経験あるいは先輩などを見てもそう思うわけですよ。

とまあ、そんなことに酒やめて、アル中沼という現状維持バイアスからなんとか抜け出せた(たぶん)人間としては改めて気づいた次第であります。そして成功体験ということで言えば、これまで記してきたしょうもない成功体験よりも、酒やめられているという成功体験のほうが何百倍も大きい。それが、いわゆるセルフエスティームをもたらしてくれるので、人生も好転するのではないかと(参考「セルフエスティームをアップさせるための、一番簡単な方法」)。

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