肝硬変、糖尿病、若年性認知症を、身体上の三大「飲酒抑止力」として認定したいと思います。

酒やめて、1634日。

肝硬変は地獄の苦しみ!?

私がTwitter上で勝手に断酒仲間と認定させていただいている「禁酒実践中のかとやん」さんが以下のようにツイートしています。

そうなのですよ。肝硬変は怖いです。私にしても断酒したばかりの頃、アル中肝硬変闘病ブログを読みつつ、こうなったらかなりやばいと思うことが再飲酒を思いとどまる、いわば抑止力になっていました。

一般に、酒で肝臓が侵されると、①脂肪肝→②アルコール性肝炎→③肝硬変→④肝癌と進むといいます。そして②から先は不可逆的らしいのです。さらに③→④は「決定」と言ってもいいようです。肝癌は癌の中でも極めてタチが悪いのは周知の通りです。

私もアル中時代、知り合いの女性から肝硬変になったら地獄だ、そして不可逆的だという話をよく聞いていました。その人のお父さんだかおじいさんがそうだったようです。何しろ桜蔭出身の才媛(この言葉もいずれポリコレ対象になるのだろうか?)の言うことなのでフムフムと神妙に聞いていたのです。が、酒はやめませんでした。

で、私の場合、エコー検査などでは肝臓がギラギラしてると医者から言われて続けていました。①だったのですね。今は、少なくとも数字上は健康に戻っています。ただしアル中大先輩である中島らも先生の『今夜、すべてのバーで』に出てくる赤河医師によれば、一度酒で壊れた肝臓はたとえ酒をやめて数値上は元に戻ったとしても、それは壊れた花瓶を貼り合わせたようなものだとのことなので、将来的に②~④を抱えるリスクは、普通の人よりはかなりあると思います。長年の飲酒のツケは大きいです。だからやはり「なるべく早いうちに」ですよね。

さて、その肝硬変に匹敵する恐怖が糖尿病です。糖尿病で怖いのは、やっぱり失明するあるいは手足を切断することでしょう。これだけ医療の進んだ世の中で手足を切断するという中世みたいな治療法なんてあり得ないと思うのに、実際にあり得るところが糖尿病の怖さです。そうしたことになれば当然ながら行動の自由が奪われ、生きる楽しさがなくなってしまいます。

以前、この糖尿病の恐怖について、亡くなった落花星さんのブログを紹介しつつ書かせていただきました(参考「酒飲んでいると肝臓がやられるというけど、その裏にもっと恐ろしい「敵」がひそんでいるよねという話」)。

それではリアルラスボスはというと……

このように飲んでいると起こる身体的な二大恐怖が肝硬変と糖尿病だとしたら、最後に控えしもの、いわばラスボスは、一昨日も書きましたけれどもやはり若年性認知症に代表される「脳のあぽーん」でしょう。昨日の繰り返しになりますが、問題飲酒を抱えている人の(若年性)認知症発症率は、60歳では二割、70歳では七割で、ちょっと半端でない数字です。そこまではいかなくても、脳機能は飲酒によって確実に低下していきます(参考「「酒をちょっとでも飲むと脳に悪影響をおよぼす」が常識になりつつある世の中だから」)。

この「脳のあぽーん」は、肝硬変や糖尿病と異なり生物的な死は招かないけれども、社会生活との折り合いができなくなってしまう、社会的な死をもたらすのですね。

そして我々あるいは我々よりも下の世代は、社会との折り合いを一生続けて行かなければいけないということはいつも書かせていただいている通りです。いわゆる楽隠居ができないのですよ。楽隠居ができない世代は「脳があぼーん」になる自由もないということです。

ともあれ、認知症とまではいかなくても脳の機能が酒によってスポイルされている状態で社会生活を送らなければいけないは、肝硬変や糖尿病に勝るとも劣らない地獄が現出するということで、そう考えるとこれら三つに思いを馳せることは、飲酒に対するおおいなる抑止力になります。

ただし、です。酒を常飲していると、こういう事態を思い描くことにすら鈍感になってしまうので、そこが酒の怖さと言えるでしょう。先の落花星さんも、足を切断するとわかっていても飲むことをやめられなかったといいますし、私も、『家庭の医学』の肝硬変の項を読みながら、あるいは画像を見ながら飲んだりしていました。私の場合、極端にして変態的ですが、多かれ少なかれ、誰もが酒によって普通では考えられない行動をさせられてしまうのです。

ということはやはり、リアルラスボスは「酒を飲む」ことに伴う意識の変化、脳の構造の変容といったものなのでしょう。いずれにせよ、なるべく早く酒と離れたほうがいいのは確かですね。

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