酒やめて、1224日。
「会うのが、いちばん」は労働強化!?
昔、「会うのが、いちばん」という広告コピーがありました。広告主はJR東海で、東海道新幹線をアピールするものです。確かテレビコマーシャルは遠距離恋愛をテーマにしていました(例の「シンデレラエクスプレス」の一環ですね)が、ただリアルターゲットは恋人たちでなく、東海道新幹線の大口顧客であるビジネスマンでしょう。まさに、直接会う打合せ&会議推奨コマーシャルです。
実はこの東海道新幹線に関して、紀行作家の宮脇俊三先生が面白い見解を述べています。
その昔、東海道新幹線ができて東京と大阪が3時間で結ばれるようになったとき、仕事でも私用でも、会う必要もないのに会わなければならなくなってしまう現象が起きたそうなのですね。それまでは手紙や電話で済ませていた関西の仕事を、わざわざ出張して行うようになってしまった、と。それはビジネスの場合、労働強化につながったと先生は述べています。あるいは関西から結婚式の招待状が届き、3時間であれば出かけなければなるまいと先生は嘆息しました。
東海道新幹線が東京大阪の日帰り出張を可能にしたとはよく聞くところですが、確かにそうでしょう。私も会社員時代たびたび東京と大阪を新幹線で往復していましたが、大阪支社に勤務していた頃、東京日帰り出張から帰ってきて夜の10時ぐらいに京都駅に降り立ち、これから七条駅まで歩き京阪電車に乗って枚方市のアパート(駅から徒歩15分)まで帰るのかと思うときの絶望感と疲労感はわりに強烈でしたねー。
新幹線のなかでももちろん一杯やっていましたが(新幹線の「水割りセット」は秀逸なメニューでした。今でもあるのだろうか?)、その京都駅からの帰途を思うと、そこでもまた一杯やらなきゃやってられない気分でした。
それはともかく、今、まさに東海道新幹線開業以来半世紀と6年ぶりに逆転現象が起きてますよね。いうまでもなくコロナ禍によってリモートワークが推奨された結果、会う必要がない時は会わないというふうに東海道新幹線開業以前の状態になりました。
「会って飲む」という行為が厳選される!?
会うべき時と会わなくても済む時が厳然と区別される時代に突入したと言えるでしょう。そしてコロナは、そのようなコミュニケーションの形態の変化を、本来なら5年かかるところ3ヶ月で促してしまったともよく指摘されるところです。当然ながらリモート会議のためのソフトは、雨後の竹の子のごとく乱立(?)しています。
会うべきコミニケーションが厳選されてきたということですね。そして酒飲みながらのコミニケーションも厳選されるということです。気軽に一杯、まままとりあえず一杯というケースは激減すると思われます。当然ながら酒の地位も低下していくでしょう。
そうなると怖いのは自宅での一人酒です。厳選されたイベント(=会うべきコミュニケーション)のときに飲む人と、日常で“宅飲みストロングゼロ”の人に分化していくのです(参考「アル中になるターニングポイントは、確かに存在しているという件」)。
今、どっちに行くのかという分かれ目に立たされているとも言えそうです。
「酒やめるのが、いちばん」なんですけどね(笑)。