酒やめて、1118日。
大昔ですが月に一度か二度、カメラマンと一緒に地方出張していました。あるとき、いつものカメラマンが、たぶん他にギャラがうんといい仕事が入ったのでしょう、NGだということで、その弟子筋にあたる人を差し向けてくれました。そして新幹線の車内で待ち合わせしたのです。
「酒飲むんですか?」と奇異な目で見られてしまった
どうもどうもなどと言って名刺交換した後、私は早速、タバコに火をつけました。当時は新幹線車内でもタバコが吸えたのです。禁煙車両はあったものの、ほんの一部だったと思います。そうするとそのカメラマンは「〇〇さん(私のこと)、タバコ吸うんですか!」とエイリアンを見るような目で見てきました。今ならわかりますが、当時はタバコを吸うのはわりと当たり前でした。
それでも許可も得ずにタバコに火をつけたことを謝って、あらためて彼の風体を観察すると、ヒッピー(死語)というのでしょうか、フラワームーブメント(さらに死語)風というのでしょうか、まあそれがおしゃれでやっているのならともかくまったくそうではない雰囲気で、こいつかなり変わってるな感を抱いたのでした。
で、新幹線が発車し、タバコも吸えないししょうがねぇなあと思いつつ、通りかかった車内販売でビールを買って彼にも渡そうとすると、またしても「〇〇さん(しつこいようですが私のこと)、酒飲むんですか!」と、心底びっくりしたような顔をするのです。朝から飲むのがびっくりではなく酒を飲むこと自体びっくりといった感じでした。
それで、そうした彼の信念(?)の理由を訊くと、彼はいわゆるインドオタクで、完全にインド的な価値観で生きていることが判明しました。つまりインド人は基本的に酒飲まないのですね。
インド人が酒飲まないということはわりによく知られています。ただ、宗教的理由だとか、そういうことではないようです。
もちろんインドにいる一部のムスリムは宗教的な理由で飲みません。ですがインドの大勢を占めるヒンズー教では、飲むなとは言ってないようです。
しかしインドでは少なくとも公共でおおっぴらに酒を飲むことはなく、飲みたい人は家で飲むパターンだといいます。それは先日取り上げた宮脇俊三さんの著作『インド鉄道紀行』でも明らかです。
ともあれインドでは酒を飲むことは反社会的な行為で、そうした意識が抑止力になっているようなのです。もちろんアル中はいますが、それに対する風当たりはかなり強いそうです。
インド人は戦うために断酒したのだ!
ではなぜインド人がそのようなメンタリティを持つに至ったのか。実はここのところが、ネットで調べてもどうもわからなかったのですが、たまたま読んだ清水義範さんの著作で知りました。ネットではわからないことが本でわかる。珍しいパターンではありますが、やはり本とはありがたいものです。
インド人が酒飲まないのは建国の父・ガンジーの教えだそうです。ガンジーは、インドがインド人の国になるためには、酒を飲まずに国民が頑張ることが必要だと説いたのですね。ガンジーは非暴力・禁欲を訴えましたが、その一環としてのものです。それが今でも生きているというのがどうも真相のようなのです。清がアヘンゆえに植民地にされてしまったこととは対照的です(参考「ストロングゼロは貧者の核兵器にもなり得る、恐ろしい戦略物資ではないかという仮説」)。
そう。何かことをなすのなら、酒を飲まない。これは基本中の基本と言えます。ちなみにインド人はIT分野ではスーパー優秀だそうで、インド人人材の確保には日本企業も熱心だとか。ただし日本企業は待遇がアメリカや中国などに比べるとよくないので、あまり上手くいっていないようです。
まあそれやこれやと考え合わせると、「酒飲まない人間は強い」は、もしかしたらこの先世界の常識になっていくかもしれませんね。