「酒飲んでる人=いい人」の価値観から、人類は脱することができるのか。

酒やめて、1844日。

コンテンツに現われたステレオタイプな人物造型

Amazon Primeで『ゆるキャン△』を観ています。タイトル通り、女子高生5人がキャンプはじめ野外活動にゆる~く挑戦していくお話で、初心者向けノウハウも紹介されていて興味深いものがあります。L.Lビーンだとかモンベルといったブランドと提携しているようで、いまどきの流行りのようなものもわかり、そこも見どころです。高校生が高価な山アパレルで全身コーデできるものなんか? という点はとりあえず措いといて。

そしてなによりも、このドラマ、青春ドラマとしてはもう超絶画期的だと思うんですよ。というのは、ここには、恋愛、進路の悩み、女子同士のちょっとした気持ちの行き違いといった、心痛む定番要素が一切出て来ません。彼女たちが心折れるのは、お腹すいたよお、とか、寒いよお、といったくらいのものです。だから安心して観てられるのですね。

そうしたドラマづくりのなかで注目したいのは、主人公たちのサークルの顧問になる女性の先生が酒好きということです。近所の酒屋さんでは「ぐび姉」と呼ばれていて、一日にロング缶×6を買っていく設定です。だから酒好きを超えて、アル中に足を突っ込んでますね。

この先生は、若くて美人で理解があり、そして酒好きということで、非常に魅力的に描かれているのです。

思えば我々は、ドラマなどでそのような人物造型をずっと刷り込まれてきました。酒好きのいい人。人間として唯一の欠点が酒好きであり、そのことが逆に、その人物のキャラに光彩をもたらすというパターンです。

典型が、先だって亡くなられた水島新司先生の『あぶさん』の景浦安武ではないでしょうか。説明の必要はないかも知れませんが、大酒飲みで、酔って球場に来ているのにホームランを打ってしまう人物造型です。実際、昔はそういうタイプの打者がリアルにいたそうで、それが昭和な野球人(=野球爺)の口から武勇伝として語られてもいます。

そういえば清原(和博)さんの断酒1年が話題になりましたけれども、清原さんにしても、覚せい剤をやっていたから飲酒についてもいろいろ言われるのであって、単なる酒好きの引退した豪快な選手であれば問題になることもなく、それが清原伝説に彩りを添えたかもしれません。少なくとも、前出の野球爺とオールドメディアは持ち上げたでしょうね。

『ゆるキャン△』に話を戻せば、青春ドラマとしてのつくりは画期的なのに、つまり従来のドラマツルギーから脱却しているのに(原作が漫画だからでしょう)、酒好き先生の件だけ「昭和」だったりします。残念……なのかどうなのかはわかりませんが。

オールドメディアと酒は手に手を取って没落していく!?

そのような人物造型がテレビなどのコンテンツで魅力的に描かれてきたのは、やはり酒造メーカーが、オールドメディアのビッグスポンサーであり続けたということもあるでしょう。何しろ昔は大手広告代理店の社内で、営業にしてもクリエイティブにしても、サントリーやキリン担当が一番のエリートだったという話もあるくらいですから。

ともあれ、酒好きはいい人、酒好きだから人物に深みが出る、といった価値観のようなものを我々世代はずーっと刷り込まれてきたのですね。だから抵抗なく、アル中になったのかもしれません。他者のせいにしたらいかんですが(苦笑)。

でも今は、それはちょっと違うんじゃねというムーヴメントは確実にありますよね。これは、テレビなどオールドメディアがあまり影響力を持たなくなっていることも背景にあるでしょう。

オールドメディアというものを媒介として、コンテンツにおける人物造型と酒は手に手を取って歩いてきたけれども、その価値観から、世の中は今、ちょうど脱しようとしているところではないでしょうか。

テレビに代表されるオールドメディアを信用できず、もうコンテンツとしてもくだらねえと思っている層は確実に広がっている。それと相まって、酒を飲む人物造型も、くだらねえ、とか、ちょっと違うんじゃね、と感じる人が増えている。オールドメディアと酒さんは、手に手を取って没落していく、そういうふうに思ったりもしますがなにか?

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