酒やめて、3211日

寝台列車は退屈だった!?
昔は寝台列車というものがありまして――今も定期列車(サンライズ出雲・瀬戸)として1往復だけ走っていますが――これに乗るのは、まさに「長い夜」を過ごすことを意味していました。
というのは、基本的に一部の車両や(寝台設置)場所を覗いて外は見えないし、停車発車する度にかなりの衝撃がやってくるのでなかなか眠れない。揺れに身をまかせまんじりとしないというパターンであり、要は退屈だったのですね。ちなみに先述のサンライズ号は窓が大きく、しかも個室で部屋の中を真っ暗にできるので、流れゆく景色(夜景)をよく見ることが可能でまったく退屈しません。眠ってしまうのがもったいないほどです。
ともあれ、昔の寝台列車の長い夜を過ごすためには、やはりお酒の力が重要だったように思います。酒飲んでとっとと寝しまおうというものですね。時刻表作家として有名だった宮脇俊三先生などは、寝台列車だと天井に頭がつかえてお酒が飲みにくいなどとマニアックなことを書かれています。
こうした「昔の事情」は家でも実は同じでして、夜は、ある程度、強制的に寝なきゃいけなかった。だから酒が必要だったとも言えます。当然ながら娯楽が少なかったからです。
昭和の時代の娯楽の代表としてテレビがありますが、とくにバラエティ番組などは、酒飲んで視ることを前提としてつくられていたようにも思います。酒とテレビはセットだったわけです。その辺は、バラエティよりはコンテンツ力が優れていると思えるスポーツ中継も同じで、野球や大相撲などにみられる「間」は、酒を飲むことと相性がいい一面がありました。
やっぱり人類は、酒を起点に分化していく!?
さて現在は、言わずもがなのことですが、長い夜、飲まずに時間を潰す方法はたくさんありますよね。スマホやネットが代表で、「発信」という、受け身だけでない娯楽(?)を我々は手に入れているわけです。SNSやブログもそうだし、むろん動画配信もそうでしょう。小説などでも出版社の力を借りずともすぐに発表できるインフラがあります。ちなみに、知り合いの高齢者のなかには「文芸的創作が一番金のかからない老後の趣味(ボケ防止にもなるし)」という方もいます。
そのように考察(?)を進めると、昭和の時代のテレビのような受け身の娯楽は酒と非常に相性が良く、一方で、現代的な楽しみ……というか、時間の過ごし方は、酒さんとは相性が悪いことがわかります。なにしろ「発信」ですから。
もう一つ、大きな違いがありまして、後者の場合、それがあわよくば収益になるということで、人生を支えてくれる可能性もあるということですよね。いやいやいや、そう考えると、ますますもって酒飲んでいる場合じゃないことがわかるというものです。
時間のつぶし方も二極化が明白になっていて、それは、酒さんと相性が良いか悪いかということが一つの基準になっている。そこに、なにか象徴的なものを感じてしまうのでございます。
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